社会保険労務士事務所
労務オフィスやまもと
有期労働契約の基礎知識
■有期契約労働者とは
契約社員、嘱託社員、パートタイマーなど、名称に係わらず使用者と期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を結んでいる労働者をいいます。
■労働基準関係法令の適用
有期契約労働者についても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、男女雇用機会均等法等の労働基準関係法令が適用されます。
■労働契約締結時の明示事項
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して期間に関する事項を明示するとともに、契約期間満了後における契約更新の有無を明示しなければなりません。また、更新する場合がある旨を明示したときは、契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければなりません。
明示すべき「更新の有無」の具体例
・自動的に更新する
・更新する場合があり得る
・契約の更新はしない
明示すべき「判断の基準」の具体例
・契約期間満了時の業務量により判断する
・労働者の勤務成績、態度により判断する
・労働者の能力により判断する
・会社の経営状況により判断する
・従事している業務の進捗状況により判断する
■労働条件の文書による明示
上記の労働契約締結時の「更新の有無」と「判断の基準」については、トラブルを未然に防止する観点から、使用者から労働者に対して文書を交付することにより明示されることが望ましいです。尚、以下の労働条件に関する事項については、文書の交付による明示が義務付けられています。
①労働契約の期間
②就業の場所及び従事すべき業務
③始業及び終業の時刻、所定時間外労働の有無、休憩時間、休日、休暇、2組以上に分けて就業さ せる場合における就業時転換に関する事項
④賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り、支払の時期
⑤退職(解雇の事由を含む)
■契約期間についての配慮
使用者は、有期労働契約によって労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間で契約することで繰り返し更新するようなことがないように配慮しなければなりません。
■契約期間中の解雇禁止
使用者は、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまで、労働者を解雇することができません。
■雇止めの予告
使用者は、以下に示すケースの有期労働契約を更新しないこととしようとする場合、少なくとも契約満了の30日前までに、その予告をしなければなりません。
①有期労働契約が3回以上更新されている場合
②1年以下の契約期間の労働契約が更新又は反復更新され、使用者との雇用関係が初回の契約締結時から継続して通算1年を超える場合
③1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合
■雇止め理由の明示
使用者は、上記の雇止めに対し、労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければなりません。また、有期労働契約が更新されなかった場合において、使用者は、労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければなりません
「更新しないこととする理由」「更新しなかった理由」の具体例
・前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため
・契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約は当該上限に係るものであるため
・担当していた業務が終了もしくは中止したため
・事業縮小のため
・業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
・職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたこと等勤務不良のため
■更新時の配慮
使用者は、有期労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、契約の実態及び労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするように努めなければなりません。
■無期労働契約への転換
1年以上同一の使用者との間で、有期労働契約が通算で5年を超えて反復更新された場合は、労働者からの申込みにより、無期労働契約に転換します。